レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

デカルト

デカルト (岩波新書)

本書は約50年前に初版が発行されていますが、何度も重版され続けているデカルト入門書のスタンダードといえる1冊です。

著者は京都大学の名誉教授であった野田又夫氏です。

デカルトは17世紀前半に活躍したフランスの哲学者であり、数学者としても知られています。

その理論的かつ明快な姿勢から、近世合理主義哲学の開祖とされています。

有名な著書に「方法序説」があり、その中の「我思う、ゆえに我あり」は彼の思想を表す有名な言葉として知られています。

本書ではデカルトの思想を解説するだけでなく、その生涯にも詳しく触れらています。

ただし専門知識として掘り下げるというよりは、本書の原型がNHKで放送された古典講座の原稿を元にしていることからも分かる通り、必要十分な教養知識として網羅しているレベルのため、"哲学"を題材にした本の中ではそれほど難解な内容ではありません。


デカルトの生きた時代を前後してガリレイニュートンが活躍しており、ヨーロッパでは科学の時代の幕が開けようとしていました。

それでも当時は科学へ対する理解よりも、宗教的な世界観が大勢を占めていた時代でした。
実際にガリレイは異端訊問によって教会から有罪判決を受けるという悲運に見舞われます。

デカルト自身は数学者であったこともあり、カトリック教徒でありながらも哲学へ対する態度は科学者に近い立場でした。

つまり科学が大幅な進歩と便利さをもたらした後世の我々から見ると、デカルトの哲学は合理的、論理的であるがゆえに理解しやすいのです。

加えて後世へ大きな影響を与えた哲学者としても、専門家でない大多数の人にとってデカルトは"哲学の入り口"として最適ではないでしょうか。