レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

風の中のマリア

風の中のマリア (講談社文庫)

オオスズメバチ(学名:ヴェスパ・マンダリニア)。

昆虫の頂点に立つ獰猛な捕食者であり、人間にとっても危険な生物です。

本書はスズメバチのワーカー(働きバチ)を擬人化した"マリア"を主人公にしています。

マリアのワーカーとしての仕事は、幼虫のエサとなる昆虫を捕獲するハンターです。

スズメバチにとって無抵抗にも等しい昆虫もいれば、時には同類のスズメバチ、カマキリやオニヤンマといった危険な武器を持った昆虫さえも狩りの対象にしなければなりません。

そしてワーカーの寿命はたったの30日

つまり主人公マリアの一生も30日であり、本書はそんなオオスズメバチの生涯を物語にするといった面白い手法で書かれています。

当然のように擬人化されたオオスズメバチは物語の中で喋ることもあれば思考することもあります。

オオスズメバチたちが自らの遺伝子(染色体)について話し出したときは少々驚きましたが、幼虫から成虫になるまで、狩りの方法、そして何よりも女王バチが1から""という名の帝国を築いて、やがて滅びるまでの過程を壮大な物語として読むことで自然に知識を得ることができます。


オオスズメバチに猛毒があることは知っていても、その生態系については殆ど知らない人が多いのではないでしょうか。

全体的には子ども向けを意識した描写で書かれているため、中学生が読んでも充分楽しめますし、小学高学年でも読めるのではないでしょうか。

もちろん大人が読んでも知的好奇心を充分に満足させてくれる出来栄えです。

人気作家の百田尚樹氏が手掛けただけあってストーリーも無難にまとまっており、夏休みの読書に最適な1冊です。