韓非
中国の戦国時代末期に登場した"韓非"。
日本では"韓非子"と呼ばれる機会の方が多いかもしれません。
私自身、"韓非"に興味を持ったというよりも、貝塚茂樹氏の著書を通じて中国思想史に触れてみたいという動機で読み始めた1冊です。
貝塚氏は著名な学者でありながらも一般読者人にも分かり易く解説してくれる著書が多く、中国史古代史に興味がある方であれば、是非彼の著者を読んでみることをお勧めします。
韓非の著書を読んだ秦王・政(のちの始皇帝)は感動して傾倒しますが、秦を訪れた韓非を脅威に感じた李斯の讒言により、毒殺されるという数奇な運命を辿ることになります。
それでも彼の法治主義の思想は、秦の国家統治の政策に採用されることになります。
法家の源流は、斉の管仲、鄭の子産、魏の呉起、秦の商鞅などに求めることが出来ますが、彼らはいずれも政治家や将軍として活躍した人物であり、学者として思想を確立することはありませんでした。
法家を思想として完成させたのが韓非であり、諸子百家の中では後発であるため、彼の思想はさまざまな影響を受けており、彼の著書である「韓非子」を過去の研究内容や最新の考古学の成果を元に厳密に検証してゆくといった手法で、韓非の思想を解説してゆきます。
従来は韓非は筍子とはじめとした儒家の影響を強く受けたとされてきましたが、貝塚氏は韓非の若い頃は道家に、その後は管仲や商鞅に影響されたという説を主張しています。
具体的な内容は少し専門的な内容になるため、興味のある方は本書を読んでみてください。
秦の始皇帝が中国全土を統一する直前に法家の思想家として活躍した韓非の生きた時代は、群雄割拠による戦乱が終わると共に、中国思想史の黄金期である諸子百家が終焉を迎える時代でもありました。
しかし韓非の生まれた韓は、秦や魏、楚といった強国に囲まれた危機存亡にある小国であり、溢れる才能を持ちながらも志を遂げることは出来ませんでしたが、2000年以上の時を経て彼の著書の知ることは決して無駄ではないと思います。
ちなみに法家の源流となった管仲や子産、商鞅らは宮城谷昌光氏によって小説化されているため、壮大な春秋戦国時代に興味のある方は是非こちらも読んでみることをオススメします。