ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上)
約10年ぶりに再読する作品です。
文庫本にして43巻に及ぶ大長編であり、またそれ以上にローマ帝国が持つ歴史の壮大さに圧倒された印象があります。
イタリアに長く在住している作家・塩野七生氏のライフワークを集大成させた作品であり、のちのち20世紀を代表する名著として評価される可能性が充分にある、時代を超えた普遍性を感じさせる作品です。
累計1000万部を超えていることもあり、本書を手にとった人も多いのではないでしょうか。
第1巻の副題は有名な「ローマは一日にして成らず」です。
神話と歴史が交差する紀元前8世紀に、狼によって拾われ育てられたロムルスによる建国、それから続く6人の王たちは、わずかな領土しか持たないローマの勢力範囲を少しずつ広げてゆきます。
また戦争だけでなく、ローマの町を干拓して下水道を整備したりする公共事業にも熱心であり、荒野だった土地を町として発展させてゆくことにも余念がありませんでした。
何もなかったローマの7つの丘に人々が住み始めて発展してゆく様子は、"国造り"というより"町造り"といった表現が相応しく、周りにはギリシア人の植民地やエトルリア人といった、ローマよりも遥かに強大な力を持った国家が存在していました。
しかし誰に気にかけないほど小さな国家であるローマが、1歩1歩着実に成長してゆく大きな要因が既にこの頃から表れていました。
それは戦争によって勝利し、敗者となった敵国の住民たちを奴隷とはせずに市民として迎えたことです。
さらに彼らが信じていた神さえも容認し、自分たちの神に加えていった結果、ローマには30万という数の神々が存在したと言われています。
世界史では皇帝の名前を暗記するのが苦痛だったローマ史ですが、塩野氏の描くローマ人の物語は、その楽しさを気付かせてくれる1冊です。
このブログではしばらく「ローマ人の物語」をレビューする日々が続きそうですが、マイペースで紹介してゆきたいと思います。