ほんとうは怖い沖縄
沖縄に在住する著者が、自らの心霊体験、そして心霊スポットをエッセー風に紹介した1冊です。
著者は沖縄の民俗伝承に詳しい人物ですが、彼自身オカルト研究家ではなく、まして霊能力者でもありません。
そのため大部分の人(=霊感が無い人)にとって、親しみやすい目線で書かれています。
逆に怪奇談を中心に読みたい人にとっては、少し期待外れになってしまうかも知れません。
沖縄の霊媒師(シャーマン)である"ユタ"の役割、昔から崇められてきた神々、信仰上欠かすことのできない聖域"御嶽(うたき)"といった独自の宗教・死生観を著者の体験を通じて知ることができます。
一方で沖縄は、太平洋戦争において多数の民間人を巻き込んだ地上戦が行われ、悲惨な戦場となった場所が心霊スポットとして全国的に有名となった側面があります。
ただし前半の沖縄民俗・宗教観的な話題から後半は一転して心霊スポットを中心とした話題に切り替わる部分は少し戸惑いを感じるかもしれません。
個人的には前半の流れを最後まで通し、後半部分を別に1冊として出版した方が、どちらも質の高い内容に仕上がったと思います。
今でも沖縄の人にとって”霊”や"死"は身近なものであり、祖先とも強固な絆でつながっています。
こうした沖縄の文化は、"独特・異質なもの"というより、昔の日本人が本来持っていた宗教観や死生観と共通する部分があり、"なつかしさ"を感じるのは私だけではないはずです。
よい意味で"ユタ"をはじめとした沖縄の豊かな民間信仰が今後も保存され続け、若い世代にも伝えられてゆくことを願います。