レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

熱砂の大陸〈巻3〉闇の聖戦士

熱砂の大陸〈巻3〉闇の聖戦士 (富士見文庫―富士見ドラゴンノベルズ)
熱砂の大陸〈巻3〉闇の聖戦士 (富士見文庫―富士見ドラゴンノベルズ)

世界設定では二十神(善の5神、悪の5神、中立の10神)から世界が構成されていますが、長編作品にも関わらず、本書に登場するのは半分の10神くらいです。

しかも中心的な活躍を見せるのは、アクラン神クアル神の2人だけであり、半数近くの神が名前さえ紹介されずに物語が完結してしまいます。

もちろん著者は本作品を描く前の綿密な構成を怠っていないでしょうから、二十神すべての特徴や役割を与えていると思われます(ちなみに著者の1人トレイシー・ヒックマンはゲームデザイナーとしても活躍しています)。

日本人作家であれば(傾向的に)余すことなく全ての神を登場させるところですが、あくまでも物語の本筋をダイナミックに展開するために、本作品の世界観に奥行きを持たせる役割に留まっています。

これは本作品に登場する"魔法"についても同じことが言え、ある神の信徒は女性しか魔法を操れないという制約があり、またある神の信徒は男女関係なく魔法を操れるものの前もって"文字(呪文書)"として用意しておく必要がある、更には、その辺りの制約が曖昧(=具体的に触れられずに)で魔法を操る神の信徒がいたりと、几帳面な性格の読者にとってはスッキリしないと感じる部分があるかも知れません。

つまり細部まで世界を表現したい日本人作家と、細かいところを大胆に省くアメリカ人作家の違いを感じずにはいられません。


もちろん一方が正解ということはありませんが、長編小説の手法として興味深い部分です。