レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

ダーク・ソード〈3〉暗黒の王子

ダーク・ソード〈3〉暗黒の王子 (富士見文庫―富士見ドラゴンノベルズ)

魔法が全てを支配する世界(シムハラハン)では、数百年に渡って魔法を基にした秩序が確立しており、その精密さは我々が暮らす現代社会と遜色ありません。

しかし一方では制度が形骸化し、貧しい暮らしを余儀なくされている階級の人間たちほど不満を募らせつつあります。

そんな息苦しい世の中で何者にも束縛されず、気ままに好き勝手に暮らす人物が登場します。

それは"シムキン"という名の若者であり、多くの人々と交流があるにも関わらず、その真の正体は誰も知りません。

シムキンは本作における"トリックスター"であり、様々な場面で遭遇する行き詰まり・停滞、(時には)ピンチを打開するジョーカー(道化師)として登場します。

"シムキン"は魔法の世界においてさえ特別な能力を持っていますが、その掴みどころの無さから時には敵か味方さえも分からない行動を取ります。

神話にも登場するトリックスターはファンタジー小説においても相性が良く、頻繁に用いられる手法ですが、それだけに物語全体のバランスや整合性を保つのが難しく、作者の力量が試されるところでもあります。

本作に登場するトリックスター"シムキン"は相当に癖のあるキャラクターであり、彼が秩序で固められた世界にどのような影響を及ぼすのか?

彼が登場する場面から目が離せません。