ダーク・ソード〈4〉光と闇の都市
引き続き、なるべくネタばらしを避けつつレビューを続けてゆきたいと思います。
主人公のジョーラムは魔力を全く持たない<死者>として生まれ、育ての母が世間の目を隠すように育ててきましたが、やがて母の死と同時に彼の正体が知られることになります。
本来であれば死を免れないジョーラムでしたが、世間から密かに隠れて暮らしている<死の神秘>を伝える<車輪の一族>の村に命からがら逃げ込みます。
<死の神秘>とは魔法が生命そのものであり、魔力を持たないものを<死>と定義する世界において一切魔力を使わず、テクノロジーによって物体を加工する神秘であり、"科学"と定義することができます。この神秘は過去に大きな災いをもたらしたことから禁忌とされています。
ジョーラムはそこでダークストーンに出会い、自らの手でダークソードを鍛えて創り出します。
このダークソードはあらゆる魔力を吸収する力を持っており、どんな強力な魔力もあっという間に無力化してしまうものです。
もっとも優れた魔法戦士(カーン・ドゥーク)ですら例外ではなく、むしろ強力な魔力を持つ者ほどダークソードは脅威になります。
いわば魔法がすべての作用を司る世界において、ダークソードは最も強力な反作用であり、この剣を手にしたジョーラムは"世界共通の敵"となり得る存在です。
しかし、やがてジョーラムの悲しい生い立ちのすべてを知ることになる触媒師の"サリオン"、ジョーラムの幼馴染の"モシア"、そして正体不明のトリックスターの"シムキン"が彼らと行動を共にすることになります。
果たして禁断のダークソードを手にしたジョーラムがこの世界で何を成し遂げるのか?
ジョーラムの正体を知り、ダークソードを追いかける世界の権力者たちの追跡がジョーラムたち一行を追跡します。
以上が物語の大筋ですが、決して一方が"悪"で一方が"善"という単純な構図ではありません。
いわば世界の秩序を保とうとする体制側と、(本人に自覚があるかないかは別として)その秩序を破壊しかねない力を手に入れたジョーラムが、この世界における生存権を賭けた戦いの物語であるともいえます。