レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

熱砂の大陸〈巻1〉放浪神の御心

熱砂の大陸〈巻1〉放浪神の御心 (富士見文庫―富士見ドラゴンノベルズ)
熱砂の大陸〈巻1〉放浪神の御心 (富士見文庫―富士見ドラゴンノベルズ)

本書はマーガレット・ワイストレイシー・ヒックマン共著による正統派ファンタジー小説です。

何を"正統派ファンタジー小説"と定義するかは難しいところですが、個人的には中世をモチーフとした「剣」と「魔法」、そして「モンスター」、「神々」といったキーワードで構成された世界観で繰り広げられる物語が当てはまります。

この2人の描くファンタジー小説は、例えるならジブリの宮崎駿鈴木敏夫のタッグのような高いクオリティの作品を生み出します。

主人公は、熱く乾いた過酷な環境(砂漠)で生活を営む遊牧民であり、ヨーロッパ風の世界が中心となることが多い正統派ファンタジーの中で一風変わったエスニックな雰囲気が漂っています。

本作品の世界設定を簡単に説明すると、世界は正二十面体を成しており、その各三角形の面には、それぞれの哲理を司った神が支配する世界が存在します。二十面体の最上部の五神は善の軸に属しており(=善の神々)、最下部の五神は悪の軸に属しています(=闇の神々)。そして中間の十面には中立の神々がいます。

つまり「正義」、「博愛」、「秩序」を司る神もいれば、「邪悪」、「残酷」、「破壊」を司る神もあり、本作品の世界を奥深いものにしています。

更にその中心には、神々さえも従わなければならない真実(スル)と呼ばれるものが存在し、様々な魔法の力も真実(スル)の力の一部を引き出して行われます。

世界の人々は所属する部族や自らの信念により、いずれかの神を信仰しています。

ここまでは奥深いながらも比較的ベタな世界設定ですが、面白いのはここからです。

さらに神々とそれを信仰する人々の間の仲介役として、”精霊”と呼ばれる存在します。


精霊は従う神によって"天使"や"魔人(ジン)"、"悪魔"など様々な名称で呼ばれますが、神によって人の前に姿を表すことを禁じられている天使がいるかと思えば、何世紀も人々と共に生活している魔人(ジン)のような存在までバラエティに富んでいます。

彼らは不老不死でありながらも、極めて人間的な感情を持っており、本作品には多くの個性的な精霊が登場します。

RPGを通じて"ファンタジー"は日本人にとっても馴染みのある世界観になりつつありますが、興味のある方は、"ファンタジーの本場アメリカ"の中でも最高峰の作品の1つである本作品を読んでみて損はないでしょう。

そのスケールと奥深さにハマること間違いなしです。