レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

熱砂の大陸〈巻6〉使徒の薔薇

熱砂の大陸〈巻6〉使徒の薔薇 (富士見文庫―富士見ドラゴンノベルズ)

長編「熱砂の大陸」もいよいよ最終巻です。

ビジネス書や歴史小説等とは違い、ファンタジー小説はストーリーそのものを純粋に楽しむことが王道であり、極力ネタバレを避けるため、なるべく世界設定などを中心に紹介するに留めたいと思います。

ファンタジー小説は一般的に少年層へ向けたものが一般的ですが、著者のマーガレット・ワイス、そしてトレイシー・ヒックマンの描く作品は大人向けに書かれています。

主人公たちが背負う多くの責任、そして身近に死を連想させる危機、そして時には男女の関係含めた苦難を抱えながら成長する姿は、幻想と現実の世界の境目を超えた"生きることの困難、そして喜び"の縮図であるといえます。

そしてその実感は、人生経験を積みつつある"大人"になってこそより強くなってゆき、作品に共感できる部分が多くなってゆく気がします。

私自身は2人の作品を思春期時代に読んでいますが、当時は何となく暗い物語だという印象がありました。しかし時が経ち成人して社会人となってから読み返してみると、まったく違った感想を抱くことに気付きます。

残念なのは本シリーズが絶版だということですが、間違いなくファンタジー小説の名作として位置づけられるものであり、今でも中古本として入手するのはそれほど困難ではないこと、そして今後ますます電子書籍が普及する中で是非もう一度スポットが当たって欲しいと思わずにはいられないシリーズです。