熱砂の大陸〈巻5〉異教徒(カフイル)の魔法
物語がいよいよ佳境に差し掛かります。
クアル神の企みを阻止すべくアクラン神が孤軍奮闘を続けますが、やがて他の神々もクアル神の野望に気付き始めます。
しかしクアル神を信仰する人間たちの築いた帝国の力は強大となり、アクラン神を信仰する砂漠の民たちを粉々に打ち砕きます。他の神々も強大な力を身につけたクアル神へ対し対抗する術がありません。
果たして世界はスル(真実)が定めたように、二十神が均等を保った世界を維持できるのか?それともクアル神が唯一絶対の神となるのか?
クアル神へ立ち向かうために善の神の1人であるプロメンサス神、そして悪の神であるザークリン神の信徒が、主人公たち一行に加わることになります。
一見するとまるでRPGでいうところのパーティーの結成ですが、本作ではそんな呑気な設定ではなく、残酷な経緯によって旅を共にすることになります。
ザークリン神の聖戦士であるアウダは、プロメンサス神を信仰する信徒たちを(異教徒という理由だけで)皆殺しにし、唯一生き残った魔法士のマシュウは奴隷として売り飛ばさられるところをかろうじてカールダンに救われた経緯があります。
また主人公たち(カールダンとゾーラ)はクアル神信徒たちの軍勢に壊滅的な打撃を受けた直後にアウダによって捕らえられ、カールダンは人間改造(いわるゆる拷問)により改宗を強要され、ゾーラに至っては(クアル神によって弱体化した)ザークリン神復活のための生贄にされるといった有様です。
アウダの行動はザークリン神の信徒としては当然であり、力を合わせてクアル神を打倒するという目的は微塵もありません。
名作といわれるファンタジー小説は空想上の世界といえども、どこか現実世界を反映した風刺的、更にいえば教訓めいた要素があるものです。
それはあたかも実際に宗教や価値観の異なる人たちが協力し合うのが如何に難しいかを示唆しているようであり、読者としても暗澹たる気持ちになってしまいます。
果たして主人公たち一行に"絆"が生まれる時が来るのか?
ついに物語は最終巻に突入してゆきます。