レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

水滸伝 3 輪舞の章

水滸伝 3 輪舞の章 (集英社文庫)

梁山泊には数多の豪傑や軍師、そして一芸に秀でた傑出した人物が集ってきます。

一方で彼らの宿敵となるも強力な布陣で対抗してきます。

ちなみに「水滸伝」の原作では、敵役として"高キュウ"が有名です。

元々はゴロツキに過ぎなかった高キュウは、蹴鞠(けまり)の才能を見込まれて徽宗皇帝に取り入り、賄賂を好んで権力を濫用します。

保身のためには手段を選びませんが、私利私欲を満たすことにしか関心の無い、小悪党といったイメージです。

そこは北方氏だけあって、北方水滸伝の高キュウの存在感は薄く、代わりに"青蓮寺"という強力な敵役を登場させます。

青蓮寺は、袁明(えんめい)を頂点とした秘密機関であり、宰相の蔡京(さいけい)でさえ無視できない大きな影響力を持っています。

アメリカのCIAやFBIあたりを想像してもらえば、おおよそのイメージを掴めるのではないでしょうか。

よって青蓮寺は政治的な工作以外にも、諜報活動も担っています。

青蓮寺は傾きつつある国家を立て直そうとする目的を持っていますが、梁山泊は世直しのために国家権力の打倒を目的としています。

手段は正反対であるものの、青蓮寺の指導者たちは汚職や賄賂といった私腹を肥やすことに一切興味を持たず、ストイックな姿勢で職務を全うしようとします。

いわば志を持った男たち同士が生き残りを賭けて戦うといった構図が、本作品の大きな枠組みになっています。

原作に色濃くあった"勧善懲悪"といった単純なイメージを払拭し、大人のためのエンターテイメントとして青蓮寺の存在は欠かすことができません。