水滸伝 8 青龍の章
腐敗しつつあるとはいえ宋は強力であり、梁山泊勢は綱渡りの戦いを強いられます。
それでも梁山泊は少しずつ仲間を増やし、そして規模を拡大してゆきます。
盗賊を働いていた人間や、犯罪により役人から追われて梁山泊に加わる無頼漢は多いですが、宋を見限って梁山泊へ入山した元官軍出身の揚志(ようし)、秦明(しんめい)、呼延灼(こえんしゃく)といった好漢たちが、梁山泊の成長を大きく助けます。
"官軍"といえば梁山泊にとって宿敵であり、相容れない存在です。
敵対する組織へ身を投じる訳ですから、今の会社員が転職するのとは訳が違います。
自分たちのアイデンティティを築いてきた存在を否定するのと変わらない、どちらかというと宗旨替えのイメージが近いのではないでしょうか。
官軍出身の好漢たちは誰もが個性的であり、北方氏が巧みに書き分けてゆきます。
揚志は情熱に燃える若き幹部候補生として、秦明は老練な思慮深い将軍として、そして呼延灼はもっとも脂の乗りきった最前線の指揮官として活躍します。
彼らは生粋の軍人であるため、兵士たちを訓練するノウハウや軍を指揮する能力に優れています。
つまり梁山泊を会社組織だとすると、優秀な幹部候補生や技術者をヘッドハンティングした形になるのではないでしょうか。
しかも彼らは官軍の弱点、そしてその恐ろしさをよく知っています。
やがてどのような形で、かつて所属した組織と対峙するのか?
こうした展開を楽しみにしながら読むのも本作の魅力です。