水滸伝 2 替天の章
長編大作「北方水滸伝」の第2巻です。
「水滸伝」といえば中国の古典ですが、およそ1000年前の中国を舞台にした物語であることを忘れてしまうほど現代小説として読みやすい内容になっています。
タイトルに抵抗を感じる人でも、まずは第1巻を手にとって読んでみることをお薦めします。
壮大な物語がゼロから始まるのかと思えば、読み始めて意外な感想を持ちます。
梁山泊の首領といえば宋江と晁蓋ですが、この2人は冒頭から国(宋)の打倒を目指す同志たちのネットワークを築いている状態から始まります。
まだ梁山泊の姿形は無いものの、例えば花和尚・魯智深といった力自慢の暴れ者が、最初から宋江の右腕として活躍します。
さらに豹子頭・林冲が武術の達人で禁軍の師範として登場するのは原作通りですが、すでに魯智深と志を共にする仲間として登場します。
あくまでも"オリジナル水滸伝"のため、原作との相違を指摘するのはこれくらいにしますが、読み進めてゆくうちに著者の意図が分かってきます。
つまり原作の前半では場面と登場人物が一気に切り替わってしまうことがよくありますが、長編小説として物語の一貫性とテンポを維持するため、キーとなる登場人物に最初から役割を与えています。
魯智深や武松は同志のネットワークを維持し、さらに開拓するために中国全土を渡り歩きます。
そして林冲は同志を牢獄から脱出させるために潜入したり、梁山泊を最適な旗揚げの拠点として考えている宋江や晁蓋の計画を実行すべく、梁山泊を根城にしている盗賊・王倫の元に工作員として潜り込みます。
序盤は官軍との大きな戦闘シーンは出てきませんが、スパイ小説のようなスリリングな展開で読者を一気に惹きつけてしまいます。
梁山泊へ潜入した林冲の奮闘もあり、いよいよ2巻の後半で晁蓋や呉用たちが入山を果たします。
真正面から国へ反旗を掲げる日が近づき、今後のダイナミックな展開が楽しみです。