レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

舞姫・うたかたの記


森鴎外の短編が5作品収められれています。

  • うたかたの記
  • ふた夜
  • 舞姫
  • 文づかい
  • 普請中

最後の「普請中」を除いていずれも鴎外初期の作品になります。

重々しい文語体で書かれていることや、ドイツ語などの固有名詞が用いられていることもあり、注釈なしではなかなかスムーズに読み進められない作品ばかりです。

各作品に共通するのは、若い頃より陸軍軍医として5年間ドイツ留学した経験が色濃く反映されているという点です。

つまり小説の舞台はドイツやイタリアであり、西洋の文学や芸術思想を積極的に取り入れようとした試みが作品から伝わってきます。

ストーリー構成自体はよく練られており、文学作品としての格調の高さが伝わってくる一方、現代の読者にとっては必要以上に難解な表現が用いられているという印象も否めません。

鴎外の作品は口語調文体となる後期の作品ほど読みやすく、前期ほど読みにくくなります。
よってこれから同氏の作品を手にとる人は、年代の新しい作品から遡って読むことをお勧めします。

それでも明治前期の日本文学に触れるという点では相応しい作品であり、ゆっくりと根気よく読めば充分に理解できるレベルです。

是非一度はチャレンジしてみることをお勧めします。