ぐうたら交友録
本ブログでたびたび紹介してきた遠藤周作こと狐狸庵山人のエッセー・ぐうたらシリーズの第3弾。
前半では、狐狸庵山人と交友のある作家たちのエピソードを、後半は市井に住むちょっと変わった人物たちへ取材を行った記録になっています。
もっとも真面目な交友録を書く気など初めから無く、その人物がいかに常識から外れた性格や趣味を持っているかに焦点が当てられています。
ところで「小説家家=変わり者」という印象は、昔の方が強かったかも知れません。
最近は普通の社会人が小説家としてデビューする機会が増えていますが、昔は売れなくとも赤貧の中でも小説を書き続け、文学論に気勢を上げていた連中といった印象が強かったのではないでしょうか。
もちろんこれは極端な例ですが、本エッセーに登場する作家たちはいずれも変人(?)であることは確かなようです。
むしろ何の面白みも無い人間は、狐狸庵山人のエッセーに登場する機会がないといってもよいでしょう。
具体的には、北杜夫、三浦朱門、安岡章太郎、吉行淳之介といった著者にとってお馴染みの顔ぶれから、梅崎春生、柴田錬三郎といった先輩作家まで幅広く登場しています。
彼らの姿を見ていると毛色は異なりますが、一昔前のプロレスラーを思い出します。
プロレスラーの力自慢は勿論ですが、かつ豪快で大食い、大酒飲みといった世間のイメージ(=期待?)を裏切らない、数々のエピソードを持っていたものです。
後半では市井の人びとへの突撃取材といった内容になっていますが、そのインパクトもなかなかです。
星占いの預言者、ストリップ宗教の教祖といったオカルトなジャンルから、爬虫類マニア、巨人応援団長、浮世絵刺青師といったマニアックな分野までをカバーしていてます。
もちろん狐狸庵山人本人も例に漏れず、自らを変人の1人として俯瞰して描いている章もお薦めです。
変人図鑑といってもいいような内容なのですが、その多士済々さが無駄に充実している内容の濃いエッセーでした。
トップセールスや凄腕エンジニア、マネジメント論を堂々と振りかざす成功した経営者がもてはやされる時代だからこそ、肩の力を抜くために読んでほしい1冊です。