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物語 フランス革命

物語 フランス革命―バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで (中公新書)

1789年7月14日

それはフランスでバスチーユ監獄襲が行われ、革命の第一歩が踏み出された日です。

人間の自由と平等」。

現代に生きる私たちにとっては聞き慣れた言葉かもしれませんが、絶対王政が行われていたヨーロッパ諸国、そして日本でも幕府によって同じような封建社会が形成されていた時代(当時の日本は寛政年間)において、生まれた出自や身分に関わらず人びとは平等であると世界へ先駆けて宣言を行ったフランス革命は、その後の影響度から考えても世界でもっとも知名度の高い革命だといえます。

私は高校時代に世界史を専攻していましたが、四大河文明から近代史までを(文字通り)頭へ詰め込まなければいけない中にあって、フランス革命の約15年間の出来事は、かなり高い密度で教科書に書かれていた記憶があります。

それでもフランス革命は、短期間で指導者が目まぐるしく変わる遍歴を経るため、受験生泣かせの事件でもありました。

また歴史の年表を暗記するだけでは、その時代に生きた人間たちを知ることはできません。

例えばジャコバン派の首領として恐怖政治を行い、多くの人びとをギロチン刑送りにしたロベス・ピエール

冷血で自己保身に長けた人物かと思えば、実際にはまったく逆の人物でした。

誰よりも革命の目標を高く掲げ、情熱を内に秘めた私欲とは無縁の潔癖な人物であったようです。


それが故に一切の妥協を許さない彼の姿勢が、王党派と妥協しようとするジロンド派、そして革命を利用して権益や財産を得ようとする人たちへの厳しい姿勢が、「恐怖政治」となって表れた背景がありました。

本書の特徴はフランス革命の主要な流れを抑えていることは勿論ですが、歴史上の登場人物にスポットを当てている部分が秀逸であるといえます。


例えばルイ16世マリー・アントワネットロベス・ピエールなどの有名な人物以外にも、ロラン夫人テロワーニュ・ド・メリクールサン・ジェストなど、日本では知名度が低くともフランス人にとっておなじみの気の高い人物に意識的にスポットを当てる姿勢は好感が持てます。

私もフランス革命に興味を持ったのは社会人になってからですが、フランス史に詳しい著者・安達正勝氏によって書かれた本書「物語 フランス革命」は、教養として体系的にフランス革命の知識を得るための決定版であるといえるでしょう。