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ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上)

ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上) (新潮文庫)

タイトルにあるパクス・ロマーナとは、ローマ帝国の支配地域内における平和を意味します。

マリウススッラカエサルポンペイウスオクタヴィアヌスアントニウスといったローマ国内の主導権を巡っての内乱がようやく終わりを迎え、平和な時代を作り上げるのがオクタヴィアヌスに課せられた使命となります。

これは共和政ローマが帝政ローマに移行することをも意味していました。

オクタヴィアヌスは神聖を意味する"アウグストゥス"という尊称を得て、ローマの最高権力者として君臨します。

アウグストゥスには、ローマの将来を見通す思慮深さや先見性、そしてそれを実現するための忍耐や継続といった才能を備えていました。

一方でカエサルは、彼にはローマ軍総司令官としての才能は無いと見抜いており、そのためオアウグストゥスの少年期にアグリッパという軍事の才能に恵まれた同世代の少年を彼の元に置くのです。

さらに外交担当として優れた能力を持ったマエケナスが、早くから腹心としてアウグストゥスを支えてきました。

つまりマエケナスが武力を用いないローマの覇権拡大を外交により実現し、武力を行使する場合でも軍事の専門家であるアグリッパに一任することで、アウグストゥス自身は内政に専念することが出来たのです。

まるでマエケナス、アグリッパが"地ならし"をした土地を、アウグストゥスが"種まき"をするかのようにして、ローマを中心とした"平和"が外側に向かって浸透してゆくかのようなイメージです。

カエサルはすべてを自分一人で決定できる天才でしたが、アウグストゥスは腹心たちと役割を分担することで広大なローマ帝国を統治してゆくのです。

具体的には、軍備削減や国勢調査、また属州の再編成や国税庁の創設、公共事業など、ローマ帝国に必要なインフラを次々と整えていきます。

かつてのように敵国との戦争で新たな領土を獲得した将軍が讃えられた時代は過ぎ去り、隣国との和平によって国境を堅固なものとしてローマ国内へ平和をもたらす者が讃えられる時代が到来したのです。